時間ができると、アンカーが緩んで「本当のこと」が見えてしまう。
ダミーに打ち込んでいた杭の向こうに、何がぶら下がっていたのか思い出してしまう。
世界はシンプルで、欲望が回る中心点も明らかだ。
「わたしを利用してください」。
もっとあからさまに言おうか。
「わたしの身体を利用してください」。
問題は、それをどうやって利用するのか、わたし自身にもわからないということだ。おそらくは誰にとっても、そのモノの使い方はわからない。預かり物の複雑な機械には、取扱説明書がついてこなかった。
だから欲望はぽっかり空いた穴の周囲を巡るしかない。その届かなさ、その何もなさを隠すために、さまざまなアンカーを使う。
たとえば、食べて吐いてみる。
たとえば、お金を貯めてみる。