彼女はかわいい。でもかわいいと言われると彼女は複雑なのかもしれない。誰でも複雑なのだ、と言いたいけれど、どうも複雑じゃないヒトの方が多数派らしくて、でも彼女もわたしも多数派ではなく、それでもわたしと彼女はかなり違って、複雑なりに複雑さが違う気がする。
自分が言われて複雑なセリフを平気でヒトに言ってしまうわたしはずうずうしい。しかしこの「ヒトを人とも思わない」ずうずうしさこそ、エロの本質でもある。驚いたことに、多くの男たちがこんな簡単なことに気付いていない。
彼女はわたしを「エロい」と言って、その「エロい」はその言葉の使い方をわきまえている感じでとてもうれしい。人間のフリをするのは、結局「人間のようで人間ではない」時の落差を捏造するためなのだろう。女というものはそういうものだ。
だがそこで醸成されたエロさと、そのエロさを活用できるドライブを持った人々の間には通底がない。そのとき、わたしたちは「オナジニンゲン」などでは決してないからだ。
わたしたちは常に出会い損ねる。
でもわたしは絶対に猫を飼わない。