「あんまり死ぬのを怖がってると、死にたくなっちゃうんだよ」。
確か北野武『ソナチネ』の中のセリフだ。
これほど的確に神経症者の構造を言い当てている言葉も珍しい。
神経症者(つまり普通の人)は、本当に死んでしまわないために、死にそうな理由を様々に作り上げて防衛する。
「死んだも同然」であればわざわざ死ぬ必要がなくなるからだ。
それゆえ、彼らが「治る」、あるいは症状を移行させるには、簡単な事実を一つ思い知らされるだけで良い。
つまり、わざわざ「死んだも同然」を作り出さなくても、生きているということは既に「死んだも同然」であるということを。
尤も、これを思い知るのは誰にとっても簡単なことではないが。