武器を持たないがゆえの


 弱いものを強いものに隠すより、強いものを弱いものに隠そう、と誰かがささやいた。
 過剰を不足へとすりかえるために。
 これはトリックではあるが、だからといって誤魔化しというわけではない。
 というのも、その鞘は刀と密着し、もう二度と抜けないからだ。
 使い道のわからない遺産を、武器を持たないがゆえの「自由」と取引したのだ。
 可能性という偽りの自由から選択の余地のない自由へと、選ぶ自由から選ばれてある自由へと。