王子と従者と熊


 熊と出会い栄誉を勝ち取りたい王子と、危険を避けさせたい従者。
 二人は森に入り、熊を探す。
 王子は熊を求め、従者に導かせようとするが、従者は王子を守るため、巧みに獣を避ける。
 こうしてホメオスタシスは保たれる。つまりsubject従者によって。
 王子は声高に出会いを求めるが、彼らの行程には常に暗黙的にsubjectのメッセージが表明されている。
 では王子は死だろうか。
 とんでもない。
 彼は戦いと名誉を求めてはいるが、死を望んでいるわけではない。
 王子は閉じたファンタジーの中で夢見ている。
 想像的「現実」というstoryでお喋りしているだけだ(個人心理学のなんと愚劣なことか!)。
 すると死はどこにあるのだろう。
 それは熊であり、確かに熊はいる。
 だがどこにいるのか、人を襲うのかは、熊のみぞ知る、というわけだ。